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ワビサビ

「この世界の片隅に」 片渕須直監督

原作コミックと同様に、子供時代のすずが中島本町へお使いに出かけるお話から映画はスタートします。

 

オープニング曲はコトリンゴの唄う「悲しくてやりきれない」。そして画面に「のん」と表示される。ご存知の通り、主人公すずの声を演じるのは「のん」。千と千尋の「千尋」が「千」となったように、「能年玲奈」は「のん」になりました。

 

美しい背景美術と可愛らしいタッチのキャラクターデザイン。

 

片渕須直監督の前作「マイマイ新子と千年の魔法」と本作「この世界の片隅に」は、高畑勲、宮崎駿両氏のアニメーションを意識して制作されたのだろうと感じます。

 

高畑勲、宮崎駿両氏のと書きましたけれど、

僕としてはこの2作は高畑勲のアニメーション映画への「アンサーアニメーション」だと感じています。

 

この辺のところは観る人によって感じ方が異なるかもしれないです。

でも一つには、大塚康生からの流れを組むアニメーションの集大成的なものというふうに位置付けておきたいように思っています。

 

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片渕須直監督についてwikipediaに書かれていることを引用させていただきます。

1960年、大阪府枚方市で出生。母方の祖父は枚方で映画館を営んでおり、子どもの頃からアニメ映画などをよく観ていたという。

2歳7か月で、東映動画の『わんぱく王子の大蛇退治』を観たことを覚えており、特に名アニメーターの大塚康生と月岡貞夫が作画したクライマックスシーンが印象に残っていたが、月岡貞夫には大学で学び、業界では先輩に大塚康生がいて、「自分の人生は、線路が敷かれた一本の電車道なのか」と不思議な縁を感じたという。

 

また、片渕監督はテレビアニメ「世界名作劇場」にて名犬ラッシーの監督をされましたが、名犬ラッシーは途中打ち切りになっています。

名犬ラッシーの打ち切りは片渕監督にとって大きな挫折となり、「これまでアニメーションでやってきたことが全否定されたように感じた」と語っています。

しかし、この挫折がその後の映画制作における大きな原動力になったという面もあるでしょう。

 

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宮崎駿との関係性については、上記エントリで少しだけ書かせていただきました。

 

上記エントリで引用させていただいた片渕監督のコラムには、高畑勲との関係についても多く言及されています。

 

WEBアニメスタイル | β運動の岸辺で[片渕須直]第17回 『セロ弾きのゴーシュ』

『マイマイ新子』上映後、そのまま帰るかと思われた高畑さんが、急にこちらへ向きを変えられ、無言でこちらの肩を3回叩いてこられた。実のところ、これまで高畑さんに少しでも褒め言葉らしいことをもらったのは、『NEMO』の演出助手時代に1度しかなく、それも「ちょっとわかりかけてきましたね」というごく控えめなものだった。

この夜、肩を叩かれたのも、「ちょっとだけわかりかけてきたな。でも、ちょっとだけだぞ」といわれたかのようで、ああ、でもこれでようやく2度目だな、とありがたく心に沁みた。高畑さんはとても厳しい教師であると思う。

 

片渕須直監督は、大塚康生、月岡貞夫、高畑勲といった方々からアニメーション制作を学んだ人であるというわけです。

 

また、上記コラムでは丸山正雄との出会いについても書かれています。

丸山正雄は「マイマイ新子と千年の魔法」、「この世界の片隅に」に企画としてクレジットされています。

WEBアニメスタイル | β運動の岸辺で[片渕須直]第71回 誰かが見ていてくれる

「マッドハウスの丸山さんが、『片渕須直という人を知ってるか? 探してるんだけど』というのよ。『大砲の街』でいっしょだったっていったら、『ああ、それならマッドのほうに電話してもらって』って。いい、電話番号いうわよ……」
マッドハウスのプロデューサー・丸山正雄という人の名前は知っていたが、探されるいわれにまったく心当たりがなかった。キツネにつままれたというか、よくわからないままに電話してみた。

 

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丸山正雄は、細田守作品のプロデュースも行っています。

「魔女の宅急便」の監督を大人の事情で退いた片渕監督。

「ハウルの動く城」の監督を途中降板した細田監督。

この両氏のプロデュースを行い才能を開花させているというのはとても興味深いところです。

 

また、丸山正雄は「はだしのゲン」の制作にも携わっています。

つまりは、「この世界の片隅に」は「火垂るの墓」を監督した高畑勲にアニメ制作を学んだ片渕監督が「はだしのゲン」を制作した丸山正雄のプロデュースを受けて作成されたアニメ映画であるということになります。

 

いうまでもなく「はだしのゲン」、「火垂るの墓」はあの戦争を描いた作品です。

戦争アニメとして、この2つの作品の存在はとても大きなものかと思います。

 

「はだしのゲン」、「火垂るの墓」のDNAを受け、新たに生まれた「この世界の片隅に」という作品。

「この世界の片隅に」という作品は、この世界に人間が住み、この世界に戦争があったという作品です。

そして、誰かの心の中で誰かが生きているという物語です。

 

原作「この世界の片隅に」

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